• 知るとさらに面白い!講談師が使う道具とは?

江戸時代から人々を魅了し続け、最近さらに注目を浴びている伝統話芸、講談。その講談には、いろいろな道具が使われていることをご存じですか?
たとえば落語の小道具は白扇と手拭だけで、杖、箸、手紙、刀、槍、煙管に煙草入れ、財布、食べ物などに見立てて演じます。一方で講談は、白扇と手拭は同様に使いますが、それに加えて張り扇、本、釈台…など、様々な道具が使われます。ここでは講談で使われる道具について、ご説明します。

右手に持っているのが「張り扇」(三代目 神田松鯉)

張り扇(はりおうぎ)

「張り扇」は、扇といっても扇子ではありません。扇の形をした釈台を打つ道具です。薄く削った竹を芯にしたボール紙の形に和紙を巻き、講談師自身が手作りで制作します。
主に拍子をとったり、時間経過、場面転換などの演出に用います。
張り扇でなく、小さい拍子木を用いる場合もあります。

「本」は、講談師自身が和紙に墨で書いたものを用います。師匠の本を借りて書き写し、和綴じにして、表紙もボール紙に折り紙などを貼って自分で作ります。
本を読むといっても、その通りの順番に読むわけではなく、講談師のセンスで、前後を入れ替えたり、飛ばしたり、説明などを付け加えたりもします。本があっても臨機応変に読むのが講談です。ですから、墨の本文の他に、朱の墨や、それこそ思いついたらボールペンや鉛筆で書き込みがしてある本もあります。

釈台(しゃくだい)

「釈台」には昔、本を置きました。今でも軍談のときは本を置く場合もあります。
寄席や講釈場には釈台は必ずありますが、地域の寄席や一般的な劇場の場合、釈台がない会場もあります。そこで、携行できる折り畳み式の釈台を特注で作り、持ち歩いている講談師も多くいます。なかには音にこだわり、本格的な釈台を車などで会場に持ち込む講談師もいます。

高座(こうざ)

「高座」は演者が芸を演じるために、客席よりも一段高くした、劇場でいうところの舞台をいいます。
座布団を置いて座ります。会場によっては、めくり(演者名や演目を書いて下げておく紙)がある場合もあります。

手前にあるのが「釈台」(三代目 神田松鯉)
※撮影:森 松夫

「極めつき!講談大全集 CD全12巻」鑑賞ガイドより。一部抜粋。

名人の張り扇

講談といえば、講談師が釈台に張り扇を打つ姿が印象的です。ここでは、「極めつき!講談大全集 CD全12巻」の付録「鑑賞ガイド」でインタビューをした3人の名人に、張り扇についてお話を伺いました。

六代目 一龍斎貞水

今の人は、張り扇は大きい音がパンパンとしないと叩いている気がしないんだろうけど、そうじゃない。貞吉先生(邑井)は「張り扇も喋るんだよ」って言っていた。つまり場面によって強弱が違う。自然に叩けるようにならないと一人前じゃない。昔の本当の通のお客様は、張り扇の叩き方の違いも楽しんだ。

先代の松鯉先生(二代目神田)は竹べらの張り扇で、いい音がしたね。真似してみたけれど、いい音にならなかった。あれは本八幡の竹じゃないと駄目なのかもしれない(笑)。昔は叩きすぎると客に怒られた。「うるせえ、寝られない」って(笑)。こっちは、あんたが寝ているから起こそうと思って叩いたんだけどね(笑)。

三代目 神田松鯉

私の張り扇は、先代の松鯉先生の作り方を踏襲しています。うちの師匠(二代目神田山陽)が先代の張り扇を持っていて、私にくれて大事に使っていたんですけれど、長い間使っていたら壊れちゃった。で、分解してみたら、ぺらぺらに削いだ竹が芯で、西の内という厚い和紙で巻いてある。これはいいなって思い、同じように作って、今、使っています。厚さで音が違うんですね。

講談師は、張り扇はだいたい自分で作ります。だから、音が人によって違う。その人の声と調子に合った張り扇でないといけない。張り扇は、私は打楽器だと思っています。今は皆さん、「叩く」って言うけれど、打楽器ですから、もともとは「打つ」って言うんです。「講談師、忘れたときに三つ打つ」ってね(笑)。

二代目 宝井琴桜

張り扇は琴柳(四代目宝井)さんに作ってもらっています。自分で作ると無骨になっちゃう。繊細になれない。琴梅(五代目宝井/琴桜・夫)は器用で上手く作りますが、それでも琴柳さんのを使っています。琴柳さんは修羅場も得意ですから、どういう音が講談に合っているのかがわかるんですね。見た目にもきれいに仕上げていただいて、とても使いやすいです。

「極めつき!講談大全集 CD全12巻」鑑賞ガイドより。一部抜粋。

いかがでしたか?
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商品の詳細は、以下よりチェックしてみてください。

極めつき!講談大全集 CD全12巻

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※執筆・インタビュー取材:稲田和浩

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