江戸時代から人々を魅了してきた伝統話芸、講談をご存じですか?
五代目宝井馬琴や二代目神田山陽ら昭和講談界の名人から、人間国宝に認定された六代目一龍斎貞水、三代目神田松鯉、そしてメディアでも活躍中の六代目神田伯山…といった名人たちの名前は聞いたことがあっても、「実際にどういった話芸なのかは知らない」という方も多いのではないでしょうか。

ここでは、初めての方でもわかりやすいよう、講談の歴史、物語のジャンルなどから、講談だけが持つ魅力の一端を紐解きます。講談の魅力を知り「聴いてみたい」と思った方は、ぜひ「極めつき!講談大全集 CD全12巻」をチェックしてみてください。魅力あふれる多様なジャンルに、一流の名人による屈指の名演を収録した「いいとこどり」の大全集は、初めて講談に触れる方にも大変おすすめのアイテムです。

講談とは? 講談がもっと楽しくなる!初めての方必見、講談のすすめ

講談と落語は、どう違う?

落語は江戸時代、市井の人たちが、おもしろおかしい話を持ち寄って、笑いあったところから始まりました。日常生活の中のおかし味、人々の暮らし、庶民の中から起こった笑いと人情を語り聞かせるのが落語です。

講談は、武士や学者、僧侶、神官などの江戸の知識人が、「太平記」や「源平盛衰記」など、昔からある本を読み聞かせました。
落語が「話す」、浄瑠璃が「語る」、漫才が「喋る」、浪曲が「唸る」と表現されるように、講談は「読む」といわれます。本来は釈台の上に本を置いて、読み聞かせを行っていました。だから、「読む」なのです。

講談と朗読は、何が違う?

本を読むのなら、講談は朗読と何が違うのか。
朗読は本を丁寧に忠実に読んで、その内容やテーマを伝えることが目的です。

講談は読みながら、物語の内容を詳しく解説することが主眼です。昔の本は文語や漢文で書かれていたため、一般の人たちにはわかりにくいものでした。それを講談師が、わかりやすく、そして面白く解説したり、自分の考えを入れたりして聞かせました。
本を解説することを「講釈する」といいました。ですから講談のことを「講釈」、講談師のことを「講釈師」ともいいます。

「講談を聞くとタメになる」とは?

昔の本を読み、講釈することで、楽しみながら道徳や歴史などの知識を学ぶことができるのが、講談です。勉強と娯楽が混ざった芸能ということで、「講談を聞くとタメになる」というわけです。

読まれる本は、はじめは戦記物が多く、合戦の場面などは勇ましく、快活に読む工夫がなされました。そのときに、張り扇で拍子をとり、リズミカルに聞かせていました。この合戦の場面は、「修羅場」と呼ばれています。今でも、喧嘩などが起こると「修羅場」という言い回しをします。

そのうち戦記物だけでなく、いろいろなジャンルの話が読まれるようになりました。こうして教養だけでなく、娯楽の要素も大きくなっていきます。
楽しいお話を聞きながら、そのお話をより深く知ることができる、そして、歴史の知識なども学ぶことができる。楽しくて、タメになる。それが講談なのです。

「極めつき!講談大全集 CD全12巻」鑑賞ガイドより。一部抜粋。

講談のジャンル 講談がもっと楽しくなる!初めての方必見、講談のすすめ

講談には様々なジャンルがあります。ここでは「極めつき!講談大全集 CD全12巻」に収録されている、代表的な6つのジャンルを取り上げ、簡単にご説明します。

ジャンル1

赤穂義士伝

「赤穂義士伝」とはいわゆる「忠臣蔵」のことですが、「忠臣蔵」というのは人形浄瑠璃および歌舞伎の演目としての題「仮名手本忠臣蔵」をいいます。「仮名手本忠臣蔵」は「太平記」の世界に借りて物語を綴っていますが、実際には元禄の赤穂事件の話だということは皆、知っていました。大星由良之助と名前を変えていますが、実は大石内蔵助、忠臣の内蔵助で「忠臣蔵」だといわれています。

講談や浪曲では「忠臣蔵」とはいわず「赤穂義士伝」といい、ほかにも義士が出てくる話はありますが、「義士伝」といえば「赤穂義士伝」のことです。

極めつき!講談大全集 CD全12巻 第1巻〜第3巻

イラスト:「義士本伝 二度目の清書」(「極めつき!講談大全集 CD全12巻」第1巻に収録)

ジャンル2

怪談

「講釈師、冬は義士、夏はお化けで飯を食い」というくらい、「怪談」も講談の得意ジャンルです。

「四谷怪談」「吉原百人斬り」「番町皿屋敷」などの他、三遊亭圓朝の怪談や「雨月物語」、小泉八雲の『怪談』を講談に脚色したものもよく読まれます。また、幽霊や妖怪が出てこなくても、人智を超えた不思議な出来事が起こる怪異談なども読まれています。

極めつき!講談大全集 CD全12巻 第4巻〜第5巻

イラスト:「応挙と幽霊画」(「極めつき!講談大全集 CD全12巻」第5巻に収録)

ジャンル3

侠客伝

侠客とはやくざ者のことです。今の暴力団とは違う、「弱きを助け強きをくじく」を信条にした侠客たちを描きました。とはいえ、博打や喧嘩をするアウトローたちの物語です。

江戸時代は武家社会で、法律も規範も武士のためにありました。武士が強権を持ち、ときに農民や町人をいじめていたとき、毅然と立ち向かうのが侠客で、武家社会の法律や規範からはずれているから「アウトロー」であったのです。「清水次郎長伝」「天保水滸伝」などの侠客伝があります。

極めつき!講談大全集 CD全12巻 第6巻〜第7巻

イラスト:「幡随院長兵衛 芝居の喧嘩」(「極めつき!講談大全集 CD全12巻」第7巻に収録)

ジャンル4

武芸物

武芸者が活躍する話も、講談には多くあります。

宮本武蔵、塚原卜伝、岩見重太郎、柳生十兵衛、荒木又右衛門など剣豪が旅に出て、他流試合をしたり、悪者や妖怪を退治したりします。旅の目的はたいてい武者修行ですが、仇討ちだったり、生き別れの親や恋人を探したりというものもあります。柳生十兵衛は天海の命で、隠密として諸国を探索して歩きました。

戦国時代から江戸時代の初期は、こうした武芸者が多く活躍しました。まさに群雄割拠の時代でした。

極めつき!講談大全集 CD全12巻 第8巻

イラスト:「寛永三馬術 出世の春駒」(「極めつき!講談大全集 CD全12巻」第8巻に収録)

ジャンル5

政談・白浪物

政治や裁判などを題材にした講談を「政談物」といいます。大岡越前守が活躍する「大岡政談」は、南町奉行の大岡越前守が頓智頓才を生かした裁判や、悪を絶対に許さない正義の活躍を見せます。遠山の金さん、根岸肥前守、大塩平八郎らが裁きを下す話もありますが、奉行というと大岡が圧倒的に多いようです。

「鼠小僧次郎吉」など、泥棒が活躍する「白浪物」も講談にはずいぶんあります。「白浪」の由来は、中国の後漢末の時代に、西河の白波に乗った賊徒の「白波賊」からきているといわれます。「白波」を訓読みし「白浪」の字を当てました。ホンモノの悪党が出てくるものもあれば、泥棒という手段で権力と戦う義賊、アウトローヒーローもいました。カッコいい悪を描くのも、白浪物の醍醐味です。

極めつき!講談大全集 CD全12巻 第9巻〜第10巻

イラスト:「鼠小僧次郎吉 汐留の蜆売り(「極めつき!講談大全集 CD全12巻」第9巻に収録)

ジャンル6

時代物

戦国武将などの活躍を描く「軍記物」は講談の醍醐味。合戦を描く修羅場など、聞かせどころも満載です。

もともとは「太平記」「源平盛衰記」など歴史書が読まれていましたが、近年は合戦場面が面白い「戦国物」が好まれているようです。戦国時代だけでなく、平安時代、鎌倉時代の物語もあります。

最近では、歴史の解釈もさまざまです。時代小説などを題材にした「坂本龍馬」や「徳川家康」など、また「伊達騒動」を山本周五郎の小説『樅の木は残った』のストーリーで語るような新釈の講談も登場しています。

極めつき!講談大全集 CD全12巻 第11巻〜第12巻

イラスト:「明智左馬助 湖水渡り」(「講談大全集 CD全12巻」第11巻に収録)

これら以外にも、ざまざまなジャンルがあるのが講談です。
世話物、文芸作品、偉人伝・評伝、芸道物……、時代も、江戸、戦国、南北朝、鎌倉、源平の時代とさまざまです。外国物として、「トーマス・エジソン」など海外の偉人伝や、「レ・ミゼラブル」などの海外文学を講談で読むものもあります。現代物の新作、恋愛や企業の話、「かちかち山」などの昔話もあります。

講談は何席あるのかと聞かれたら、数限りなくある、としか答えられないでしょう。

「極めつき!講談大全集 CD全12巻」鑑賞ガイドより。一部抜粋。

講談のこれから
六代目神田伯山インタビュー 講談がもっと楽しくなる!初めての方必見、講談のすすめ

さまざまなジャンルがあり、聴いて楽しく、タメになる「講談」。そんな講談の魅力や「これから」について、メディアでも活躍中の講談師、神田伯山先生にお話を伺いました。

六代目 神田伯山

「最もチケットの取れない講談師」と呼ばれ、活躍はめざましい。メディアでの活躍だけでなく、師匠ゆずりの連続物などを熱く語り、講談のファンを確実に増やしている。
昭和58年、東京・池袋の生まれ。本名・古舘克彦。武蔵大学経済学部経営学科卒業。立川談志に傾倒し、談志の好きな講談を聞きに行き、最初は戸惑うも、その魅力にひかれていく。

平成19年、三代目神田松鯉に入門し、神田松之丞。24年、二ツ目昇進。芸の研鑽がファンを増やし、千人規模の独演会を都内、地方問わず満員御礼にする。

令和2年、真打に昇進し、六代目神田伯山を襲名。

代々の伯山を背負う

令和2年2月に、六代目神田伯山を襲名させていただきました。二ツ目時代から、三ツ鐶(三代目神田伯山の紋)はつけさせていただいています。私は伯山の中でも三代目が好きで、生き方とか、読み物の感じだとか。それで、三ツ鐶がついた着物を着ているのが嬉しい、というのはあります。三ツ鐶をつけることで、私の中には代々の伯山を背負っているという気になって、引き締まります。

「極めつき!講談大全集 CD全12巻」収録演目について

「鼓ヶ滝」は愛山先生(二代目神田)に教わったんですけれど、どこに行っても喜んでいただけるネタなんです。寄席でも地方公演でも便利で。時間の伸縮もできて、老若男女楽しんでいただける。私の監修で絵本にもなりました。いい読み物です。愛山先生は六代目の貞丈先生(一龍斎)に習ったそうで、講釈師が寄席などでやりやすいネタなんじゃないかと思います。
愛山先生はほとんど張り扇を入れないんです。私は入れていて、その方が講談らしいし格調も高いんですが、そのうち張り扇を入れなくてもできる愛山先生の境地になれば、入れなくなるのかもしれない。その意味では、まだ未完成の「鼓ヶ滝」です。当然ですが。

「笹川の花会」は、師匠がよく男の美学って言っていますね。師匠は「天保水滸伝」の他の場面はあまり読んでいない。「花会」が好きなようですね。男の美学っていうのは、現在では女性にとってキャッチ―じゃないし、古臭い印象を与えると思うところもあるんですが、「花会」や「天野屋利兵衛」は古い価値観も含めて、男の美学もあるよな、とも思います。

ただ、滑稽な読み物のときは、時代に合わせて手直しをしています。笑いどころでも、今なりに面白く変えていかなきゃいけないところもあるんです。それをクリアしながら、より面白くできなきゃいけないと思います。それが現代に生きている私たちの使命で、そこを勝負しなくなると、令和の時代の講談ではなくなるかなと。

「鼓ヶ滝」は「極めつき!講談大全集 CD全12巻」の第12巻、「天保水滸伝 笹川の花会」は第6巻に収録。

新たな同志と共に

講談はとにかく面白い。最初聞いたときは難しかったのが、こっちも年をとって、知識も増えて、こんなに評価が変わったのも珍しいです。一回好きになると、嫌いになりません。ネタ数も多いですし、勧善懲悪の物語ばかりだと思われがちですが、そうじゃない物語もたくさんある。悪党は悪党でカッコいい。

講談にはいろんな芸能に通じる面白さがあって、芸能のハブ空港のようなところがあるから、落語も歌舞伎も文楽も浪曲も面白くなるんです。
耳が慣れるというのはあります。落語もそうですよ。志ん生師匠の全集を買って最初に聞いたときは、ピンと来なかった。でも一年後に聞いたら面白かった。たから、このCD全集も何度も聞いて、長く楽しんでいただきたい。

これからの講談界には期待しているんですよ。漫画で『ひらばのひと』(著・久世番子、監修・伯山/講談社『モーニング』連載)っていうのが始まって、これが面白い。漫画とか小説とかで講談が取り上げられる、そういう広がりが嬉しいですよ。お客様は増えているし、先輩、後輩にかかわらず、講談師皆が頑張っています。いい展開で新しい人も増えてくるでしょう。新しい人が講談に一生懸命取り組んでくれる。同志を増やしていきたいですね。

「極めつき!講談大全集 CD全12巻」鑑賞ガイドより。一部抜粋。

いかがでしたか?
講談の魅力に触れ、「聴いてみたい!」と思った方はぜひ、「極めつき!講談大全集 CD全12巻」をチェックしてみてください。
神田伯山先生のインタビューに出ていた「鼓ヶ滝」「天保水滸伝 笹川の花会」はもちろん、一流の名人による屈指の名演を収録した「いいとこどり」の大全集です。

極めつき!講談大全集 CD全12巻

極めつき!講談大全集 CD全12巻

日本の代表的な話芸の一つ、講談。
伝統芸能としてラジオなどでも多くの人々から親しまれてきましたが、このたびユーキャンからついに、講談の全集が登場しました。

義士伝や怪談、侠客に武芸といった魅力あふれる多様なジャンルに、一流の名人による屈指の名演を収録した「極めつき!」と呼ぶにふさわしい本全集。
初心者から通の方まで楽しめるこの全集をぜひお見逃しなくご愛蔵ください!

ユーキャンの通信販売限定のため
一般の書店やCDショップなどではお求めいただけません。

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※撮影:横井洋司(六代目一龍斎貞水)/森 松夫(三代目神田松鯉)
※イラスト:いずみ朔庵
※執筆・インタビュー取材:稲田和浩

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