「準備と稽古こそが私のすべてです」市原悦子さんインタビュー〜名作『セロ弾きのゴーシュ(宮沢賢治)』について
――市原さんが考える『セロ弾きのゴーシュ』の魅力を教えてください。
『セロ弾きのゴーシュ』は、ゴーシュという偏屈な青年が大人になる成長物語といわれることもあります。宮沢賢治には真面目なイメージがありますが、そういう面を強調しすぎると、賢治の作品の面白さは伝わらないと思うのです。もっと破天荒で、お行儀が悪いのが賢治の作品の魅力だと思っています。
――物語そのものを楽しむということですね。
聴いている間は難しいことは考えず、動物たちとゴーシュの噛み合わないやりとりや、ゴーシュがヒステリーを起こすさまを、「何だこりゃ」と面白おかしく楽しんでもらえればと思います。
――賢治の作品は、擬音など言葉の響きも楽しいですね。
『セロ弾きのゴーシュ』では、「ごうごうごうごう」とか「ぐるぐるぐるぐる」といった擬音がたくさん出てきます。そういうところはできるだけ面白く響かせるようにしました。音の響きが賢治の作品の大きな魅力なので、黙読してももちろん楽しいのですが、耳で聴くと、さらに味わいが増すと思います。
――朗読する前には、どのような準備をされますか?
一つの作品を朗読する前、少なくとも一週間は準備期間をいただくようにしています。あまり細かいプランを立てず、とにかく作品全体を毎日読み続けます。すると頭の中に、だんだんと作品の世界が広がってくるのです。各場面に絵のように色がついてきて、登場人物の位置が見えてきて、姿勢とか表情とかが劇の舞台のように浮かび上がります。
――動物たちの表情も浮かんできたのですか?
そうですね。ゴーシュと動物が会話するときの位置や動物たちの表情が浮かび、最後には声まで聞こえてきました。そうして、しっかりと作品を読み込んでから、どういう声を出そうかとか、高い声か低い声かとか、技術的なことを考えます。どこでどう間をとるか、ということも重要です。
――“間”は大切にされますか?
間によって、台本の中に時間の流れをつくることができます。間の長さも、微妙に長くしたり短くしたりと、いろいろ試して本番に臨みます。
――朗読の本番までに、大変な準備を重ねているのですね。
朗読に限らず、やはり準備と稽古が一番大切です。それをしなければ、お客様に届きません。やってもやっても、やり尽くすことは決してないのですが、準備と稽古こそが私のすべての基本です。
※「セロ弾きのゴーシュ」は、『市原悦子の名作朗読集 朗読CD全12巻』に収録されています。
市原 悦子(いちはら えつこ)
千葉県生まれ。高校卒業後、俳優座養成所を経て1957年俳優座に入団。「近松心中物語」「ディア・ライアー」「芽キャベツがほしい」「狂風記」「あらしのよるに」「ゆらゆら」など、多数の舞台に出演。また映画では「黒い雨」「うなぎ」「わらびのこう」、テレビでは人気シリーズ番組「家政婦は見た!」など多数出演。「まんが日本昔話」を筆頭に朗読でも高い評価を得て、民話や童話の朗読会「朗読とお話の世界」を日本各地で精力的に行っていた。2019年逝去。
市原悦子さん出演作品のご紹介
市原悦子の名作朗読集 朗読CD全12巻
日本文学史に燦然と輝く文豪たちの名作、11作品を収録。全作品ノーカット全文朗読でお楽しみいただけるCD全集。
じっくりと聴けば、名作の感動に胸が熱くなり、心が生き生きと若返る…。そんな、市原悦子さんの朗読の集大成をご堪能いただけます。
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朗読の名手・市原悦子さんが、その才能と情熱を注ぎ込んだ、日本文学の朗読CD全集です。
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日本文学史に燦然と輝く文豪たちの、名作11作品をお届けします。
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全作品、全文朗読です。
ポイント4
特製付録として、朗読原稿(全2冊)も合わせてお届けします。
市原悦子さん朗読作品
●高瀬舟 ●最後の一句 ●羅生門 ●奉教人の死 ●セロ弾きのゴーシュ ●猫の事務所 ●走れメロス ●黄金風景 ●伊豆の踊子 ●野菊の墓 ●坊っちゃん
ご購入者の声
市原悦子さんの女優として培った力があらゆる場面に表現されて、聴く者にとって、その感情が手に取るように伝わってきました。 (長野県・男性)
『奉教人の死』での市原悦子さんの朗読は、感動そのものでした。 (埼玉県・75歳・女性)
聴いてみたら、思ったとおりの朗読に感動しました。「走れ、メロス!」と大きな力強い声が今も耳に残っています。 (東京都・63歳・女性)
聞いて楽しむ日本の名作 朗読CD全16巻
なるべく多くの作品を楽しめるよう、小説は「原文朗読」と「あらすじ朗読」を織り交ぜて構成することで、“傑作”と称される文豪たちの小説48作品、詩歌121作品を収録することができた、CD全集。
朗読してくれるのは、市原悦子さんをはじめ、一流の俳優・文化人10名です。
ポイント1
「坊っちゃん」「伊豆の踊子」「雪国」「走れメロス」…名作ならではの言葉の響きに、心がす〜っと癒されます。
ポイント2
小説は「原文朗読」と「あらすじ朗読」を織り交ぜた構成で、敬遠しがちな長編作品も、手軽に楽しめます。
ポイント3
小説48作品、詩歌121作品の朗読シナリオ、解説書付きです。
市原悦子さん朗読作品
●蜘蛛の糸 ●どんぐりと山猫 ●檸檬 ●山椒魚 ●ごん狐
ご購入者の声
「蜘蛛の糸」市原悦子さんの朗読には心打たれました。情景が浮かび心洗われる思い。何度も聞いてます。 (京都県・71歳・男性)
市原悦子さんの「蜘蛛の糸」で“カンダタ”のセリフの声の使い分け、気合いの入れ方に感動しました。 (香川県・16歳・女性)
市原悦子さんのファンです。「どんぐりと山猫」日本昔話しを思わせるようで、大変面白く、ストーリーにどんどん引き込まれる語りは最高です!主人も讃称していて、二人で何度も何度も繰り返して楽しく聞いております。「ごん狐」も心に残りました! (神奈川都・67歳・女性)
名作をあなたに 第1集+第2集+第3集 朗読CD全12枚
作品はすべて原文をノーカットで収録していながら、短いものは約3分、長いものでも約79分という、聞きやすさにもこだわったCD全集。
市原悦子さんをはじめ、豪華俳優陣が、迫真の朗読を披露します。
ポイント1
全文朗読で文学をまるごと味わえます。
ポイント2
語り手は、舞台や映画・ドラマなどで活躍しているベテランの俳優陣。表現力豊かな朗読は、原作の味わいを忠実に引き出しながら、作品に新たな命を吹き込みます。
ポイント3
夏目漱石や森鷗外など、文学史を代表する作家たちの小説19作品・詩1作品を収録。何度も聞きたい名作ぞろいです。
ポイント4
20作品すべての朗読原稿を全文掲載した、「朗読原稿集」もお付けします。
市原悦子さん朗読作品
●よだかの星 ●オツベルと象 ●やまなし
ご購入者の声
市原悦子さん、橋爪功さんの胸に響く語り口に満足しています。 (三重県・96歳・女性)
ふるさとのむかしむかし 朗読CD全12巻
人々が伝え残してきた民話から特におもしろいものを選び、語りに『まんが日本昔ばなし』でおなじみの市原悦子さんと常田富士男さん、そして平良とみさんの3名を迎え、収録したCD全集。
ポイント1
北は北海道から、南は沖縄まで、日本全国すべての都道府県から民話を選りすぐりでお届けします。
ポイント2
桃太郎、花咲かじいさん…おなじみの昔話から、地方色豊かな珍しいお話まで、たっぷり収録しています。
ポイント3
収録されているすべてのお話に、フルカラーのイラストがついたオリジナル冊子付きです。
市原悦子さん朗読作品
●コロポックル ●月に送られた子供 ●神の魚 シシャモ ●阿寒湖のマリモ ●追いかけ星の由来 ●金ひり犬 ●ニシンの神様 ●宝ひょうたん(岩手) ●奈良梨 採り(岩手) ●うぐいすの座敷(青森) ●タニシ息子(岩手) ●タコ屋長兵衛(青森) ●蛇の宝箱(秋田) ●ざしきわらし(岩手) ●恩返しの鶴(山形) ●貧乏神(福島) ●政治郎と狐(宮城) ●蛇女房(福島) ●尻鳴りヘラ(宮城)●シャラコ善兵衛(福島) ●鮭の大助(山形) ●瓜姫とあまのじゃく(石川) ●かじ屋鬼(富山)●鬼も内(新潟) ●東尋坊のいわれ(福井) ●佐渡の団三郎(新潟) ●鏡騒動(福井) ●しらひげ草の由来(石川) ●たのきゅう(埼玉) ●猿島(千葉) ●こぶとりじいさん(群馬) ●おいてけ堀(東京) ●鼻高たっぽん(栃木) ●金太郎とやまんば(神奈川) ●絵馬の馬(茨城) ●下田富士と駿河富士(静岡) ●弓の名人と化け物(岐阜) ●しっぺい太郎(長野) ●あわて者 長吉(三重) ●天の川のいわれ(山梨) ●やまんば(愛知) ●長源寺の化け蟹(山梨) ●浦島太郎(京都) ●久米の仙人(奈良) ●琵琶湖のはじまり(滋賀) ●三つの話(和歌山) ●河童の恩返し(大阪)●笠地蔵(兵庫) ●鷲にさらわれた子供(奈良) ●花咲かじいさん(島根) ●弥六淵のいわれ(鳥取)●蟹淵の主(島根) ●あまのじゃく息子(広島) ●桃太郎(岡山) ●寝太郎の知恵(山口) ●犬島の由来(岡山) ●そろばん占い(香川) ●地獄と業師(徳島) ●うばすて山(香川) ●仙人の教え(徳島) ●天狗のわび証文(愛媛) ●シロぺん、クロぺん(高知) ●炭焼き長者(愛媛)●百合若大臣(福岡) ●きりかぶ山の由来(大分) ●天狗の隠れみの(佐賀) ●毘沙門様の申し子(宮崎) ●宝手ぬぐい(長崎) ●幸運な初夢(鹿児島) ●うぐいす言葉(熊本) ●聞き耳ずきん ●動物の恩返し ●絵姿女房 ●天道さん 金の綱 ●飛びつき黄金 ●旅人馬 ●ミロクとシャカ
ご購入者の声
市原悦子さんの、はっきり聞き取り易く情感たっぷりの語り口と、常田富士男さんのほのぼのとした語り口に、孫をはじめ家族皆で楽しませて戴きました。 (広島県・70歳・男性)
語り部(市原悦子さん、常田富士男さんがすばらしいです。孫たちにも聞かせます。 (大阪府・79歳・女性)
市原悦子さんの声、常田富士男さんの声を永遠に残しておきたいと思った。また、朗読の仕方の勉強にもなると思う。 (広島県・64歳・女性)
市原悦子さんは平成31年1月、逝去されました。
ユーキャンの多くの朗読全集に出演してくださり、しみじみと味わい深い、唯一無二の朗読を聞かせてくださった市原悦子さん。深い感謝と共に、謹んでお悔やみ申し上げます。