知っているようで知らない
「昭和の日本軍と太平洋戦争」〜半藤一利氏 特別インタビュー〜

昭和史研究の第一人者であり、ユーキャンDVD全集『太平洋戦争』の総合監修者でもある半藤一利先生に
私たち日本人があまり知らない「戦争」のことを伺いました。
戦時下を生きた兵士たち、そして国民は、戦争をどのように捉えていたのでしょうか。
※このインタビューは「太平洋戦争」(第1巻〜第10巻)完成当時の2006年に行われたものです。

半藤一利

半藤一利(はんどう かずとし)氏 略歴

昭和5年(1930年)、東京・向島に生まれる。
東京大学文学部卒業後、文藝春秋入社。「週刊文春」「文藝春秋」編集長、取締役などを経て作家に。昭和史研究、夏目漱石研究で知られる。
『日本のいちばん長い日』、『「真珠湾」の日』、『昭和史』、『漱石先生ぞな、もし』(新田次郎文学賞)、『ノモンハンの夏』(山本七平賞)など著書多数。

『太平洋戦争』の監修、お疲れ様でした。改めて完成された作品をご覧になっての感想はいかがでしょうか。

一口に「太平洋戦争」と言っても戦場は広大、戦略戦術は非常に複雑です。真珠湾攻撃とかインパール作戦とか、どの局面を取り上げてもそれだけで全10巻の全集ができてしまうほど。それを一つの流れとして紹介した事自体が特筆すべき企画だったと言えると思いますね。

戦争が起きた背景、そしてどう推移したか。研究者はともかく一般の人が理解するのは難しい事と思うが、この映像集は3年8ヵ月の実相を分かりやすくまとめている。そういう意味で決定版と言ってもさしつかえないと思います。

全く戦争を知らない世代のスタッフは、「こんなに映像が残っていたのか」と驚きました。

この全集は関係映画会社や資料館を全てあたって、戦後あまり公開されてこなかった映像を探して集めています。当時の国策映画会社と軍のカメラマンが撮ったものが主だが、米軍が撮影したフィルムも多く入っています。

特に戦争が激化し、負けが込んできてからの日本側の映像は少ないので、連合軍側からの映像は戦史的にも価値の高い記録です。とは言えどの国のカメラマンだって命がけで、1分後には予測できない事態が起こり得るんだから、映画のような決定的シーンはありませんが。

半藤一利

カラー映像の衝撃。そして幻の戦艦「大和」

米軍のカラー映像には特に生々しさを感じました。モノクロ映像だと、どうしても「遠い昔」という気がしてしまうのですが、カラーで見ると、「ああ、本当にここでこんな攻防があったんだ」と改めてリアルに感じられます。

そうだね。当時の国力を反映して、米軍はカラー映像も多いが、日本はずっとモノクロ映像だったからね。

しかもわが国の戦時中のニュース映画は全く信用できないね(笑)。レイテ沖海戦で味方の艦隊が燃えているのに、「炎上する敵戦艦!」なんて説明していた事もある位だから。勿論この全集では防衛省の専門家に協力してもらい、「この戦場ではこの飛行機は飛ばなかった」という意味での正確さをかなり神経質に追求している。

貴重映像と言えば残念なのは、スタッフも必死で探したんだが、人気の戦艦「大和」の動く映像がなかった事だねえ。当時最高の軍事機密だから当然と言えば当然なんだが、日本が撮った「大和」の写真は土佐沖で試運転しているところが2枚、トラック島で武蔵と並んでいるのが1枚、マリアナ沖海戦の大和・武蔵…全部合せて7枚位しかない。米国が撮影した沖縄特攻の大和沈没の写真はかなりあるが…。それも貴重な実像だ。日本側では撮れないのだから。(※)

大きく3種類に分けられる戦中・戦後世代の心

景色

同じ日本人でも、戦争に対する考えや想いも異なり、あまり知識も共有されていないのでは、と思うのですが…。

この作品を観たいと思う人のタイプは、次の3種類に分けられると思いますね。

まずは戦争体験者。出征した経験があったり、空襲の記憶がある世代。私もこの世代に入ります。戦争の悲惨さや当時の指導者の無謀さを肌で感じていますね。だからあれは愚かな戦争だったと分かっているけれど、同時に、そうは言っても「我々日本人は一所懸命やったんだ」という気持ちもある。それは動かせない。

自分と同世代や先輩が死んでいった事への、贖罪と言っては大げさかもしれないが、生き残った人間が持たざるをえない辛い想いです。つまり鎮魂の想いだ。だから自分の経験を再確認する想いから見る。何が正しくて何が間違っていたのか、我々がやっていた事は何だったのか。永遠の問いかけです。

私は中学生の時、東京大空襲に遭った。向島に住んでいたので焼夷弾直撃です。自分の目の前にいる女性が火に巻かれて死んでゆくのを、何もできず呆然と見ていましたからね。

次は、戦後まもなくの教育を受けた人たち。
彼らはいわば「戦後民主主義の権化」だ。戦前と価値観が逆転、学校では戦争はとにかく良くないと教わってきて、何も見たくもない、聞きたくもない。特に青年の頃は毛嫌いしている。
でも面白い事にね、この世代の上の方は一番軍歌が歌えるんです。私なんかよりずっとよく知っている(笑)、彼らは子どもの時に歌わされていたからね。だからあの戦争を全く知らないわけじゃない。彼らが歳をとって、今まで太平洋戦争=悪の図式で全否定していたが、今になると、それで全部なのか、疑問を持つようになる…。あの戦争を日本の「歴史」として見る。日本人とは何だろう? という時に、あの時代を外すことはできないからね。考えるためには、まず知らねばならない。だからここから「歴史の教訓」を得ようとして見る人が多いんじゃないかと思います。

そして若い世代。君たちのような世代は…。

※映像は数秒程度実在しますが、編集の都合上、本商品では敢えて採用していません。

長年知りたかった事実が、貴重な映像資料で明らかに。
太平洋戦争・第一集 DVD全5巻

あの時、何が起きていたのか…。
終戦から70年余、戦争経験者も少なくなった今、戦争の事実を語り継ぐことは私たちの役目といえます。

実録映像集『太平洋戦争』は未曽有の大戦争について、その発端から終結までを克明に記録したDVD全集です。

貴重な映像と詳細な資料をもとに、公正な視線での検証を加え、戦争の全貌を明らかにしていきます。ここでは、その前編となる「第一集」(第1巻〜第5巻)をご紹介します。

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