本を読むのではなく朗読で聞くということの魅力を教えてください。

すごく臨場感あふれる語りなんです。それは目で見る物語とは違って、耳のみで物語を受け止めますから、こちらに伝わってくるものも違いますね。私なりの物語のイメージを作っているのかも知れませんけれども、耳から物語が入ってくると頭の中でいろんな情景が浮かびます。『金色夜叉』なんかも、すごく情景が浮かんだんですよ。

『原作＋あらすじ朗読』という構成についてはいかがですか？

私のこの歳だと、とてもじゃないけれど長いものを最後まで追求できないので、「聞いて楽しむ日本の名作 朗読CD全16巻」のように『原文＋あらすじ』という、さわりのところを選んでいる方が良いと思いました。一つの物語だけで成り立っている商品ではなくて、ダイジェスト版でいくつかの名作が入っている方が良いなと思ったのです。

あらすじを交えてくれているので、こんな話なんだと頭の中で整理ができて、名場面の朗読がより鮮烈なイメージでもって耳から頭へと入ってきます。受け止める用意ができているから、お話がスーっと頭に入ってくると自分の体験や思い出と重ね合わせやすく、さらに物語の世界に入り込んで行きますよね。
（『金色夜叉』は）熱海で蹴られているような場面が有名ですからその辺のことしか頭になかったのに、「聞いて楽しむ日本の名作 朗読CD全16巻」を聞いていると「そうか、この場面の背景にはそういう事情があったんだなぁ」と知ることができて、登場人物の心境に思いを馳せると、もう自分のことみたいに感じてもきます。

私は１つの小説をそんなに深く聞かなくても良いから、さわりを知って、あらすじを知って、まずはそうして文学作品に触れたいという思いがあったので、「聞いて楽しむ日本の名作 朗読CD全16巻」は自分の気持ちにぴったりと沿うものでした。

『小説48作品、詩歌121作品を収録』というボリュームについてはどうでしょう。

これだけ作品の数が揃っていて、しかも原作とあらすじとが合わさって紹介されているような感じになっているので、今までだったら読む気の起こらなかった小説でもちょっと聞いてみようかしらという気持ちにはなりますね。全集に入っていれば、これは作品名しか知らないわと思ったものも聞いてみると意外と楽しいというか、あぁそうだったんだ…みたいな感動を覚えたりしますね。

「聞いて楽しむ日本の名作 朗読CD全16巻」を購入して、一番良かったことは何でしょうか？

いつでも好きな時に文学に耳から触れることができるところですね。何回聞いても、聞き手のその時の気持ちによって受け取り方も違ってくるの。ある時は“あぁ、そうか！”とすっと受け流し、同じ作品を別の時に聞くと深く感動するなど、何て言うんでしょうか、物語の受け止め方で自分の今の気持ちを知ることもあります。

H.S様にとって、「聞いて楽しむ日本の名作 朗読CD全16巻」とは？

気障な言葉で言うと、心のビタミンみたいなものですよね。心の中の彩りと言ったら少し違うような気がしますけれど、そういう心を潤すお薬のような存在と思います。自分の楽しみや悲しみを共にできるのがこの朗読CD全集だと思います。ある時は友達みたいですね。このCDの中に読み手の誰かがちゃんと存在して、私と一緒の思いで朗読してくれるように感じております。